hakusangogo

生徒の作品を掲載します! どうぞ、よろしく

二季しかなくなった私たち

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何だかトンチンカンな歌ですけど、この子らにしてみれば、わりとフツーの感覚だったのかな。まあ確かに、温暖化した地球では、ものすごく寒いか、ものすごく暑いかのどっちかで極端に傾いてしまいます。

 

微妙な季節のゆらぎなんかなくなって、ものすごくどっちかです。一日でも、朝晩は冷たく、昼間は夏日とか、もうどっちにしたらいいのというのがよくあります。

 

安定的に暑いのは七月・八月なんだろうけど、それさえ当てになりません。夏でもずっと寒い日々が続くことだってあり得ます。さて、今年はどうなるんだろう。

 

テスト中窓から見える青い空夏が終われば冬来るような   男子

 

あの子の作品でしたか。忘れん坊で、遅刻もよくして、いつもトンチンカンなことを言うイメージでしたけど、そうではなかった。彼はいろいろと見ていたんですね。具体的な何かを一つでも入れてくれたらよかったのにな。

 

都会で空を見上げてる?

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都会の学校に進学していった彼女。一人暮らしでがんばっていることでしょう。

 

高校時代は、追っかけをしているアーチストのコンサートのはしごはしたでしょうけど、ずっと都会に住み続けるって、どんな感じかな。

都会の水は合ったのか、それともふるさとが恋しくなったのか、そんな数か月で出る結論ではないですね。いやでも住み続ける場合はあるし、ホントに都会の中で泳ぎ回る、水を得た魚になるかもしれないし、それは彼女自身もわからないかもしれません。

でも、独立独歩で自分の道をしっかり歩いていた彼女だから、どっちにしろ納得しながらやっていくんでしょう。イヤになったら、すぐにふるさとは受け入れてくれるし、ふるさとならふるさとでの生活スタイルもあるはずです。

 

夏の夜見上げた空の闇の中きれいな星を目に映し出す

 

星々をガシッとわしづかみにして、心の中で映じて見せる二段階作業をするんですね。ボンヤリみているのはイヤみたい。星を見たら、それをすべて取り込んで、自分のものにして、見たまんまというのか、自分流に星空をアレンジしてしまう。

 

これくらい活力がないと、コンサートのはしごはできないんだ。追っかけするって、ものすごい情熱ですもんね。

おかたづけしましょう!

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お片付けしよう! というと、私はドッチラケの身のまわりを何とかしなくちゃいけないのですけど、若い人たちにもそれぞれのお片付けがあるんでしょうね。

 

ゴールデンウイーク、むやみに休みが設定されていて、来年なんかは時代の節目ということで十連休になるということでした。

こんなに休みばかり設定しても、お金がないんですから、何も楽しめないじゃないですか。

文句を言っても始まらないし、もっと詩的にならなくてはいけません。

 

大掃除「終わりそうにはなさそうだ」

卒アルながめ

つぶやいていた            女子

 

啄木の三行書きが似合う短歌でした。

 

たぶん部屋の掃除をしようとしていた。あれこれと取り出す中に卒業アルバムが見つかった。ついつい見ているうちに、何も片付いていない部屋の中で所在なげな自分を見つける。

いつまでたっても、片付けがすまないなと半分諦めた感じでつぶやいてみた。

 

そういう短歌でした。よくあるといえばよくある風景です。

でも、彼女らしい切り口で描かれているような気がします。

首振りしない扇風機

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四月が終わろうとしているだけですけど、夏の気分はありますね。

 

休日の夕方、窓を開けて網戸にしています。どこかのおうちで焼き肉でもしているのか、ずっとオバチャンの笑い声がしています。お年寄りの焼き肉なのか、そんなに肉々しい匂いもしませんね。みりん干しを焼いている匂いがしますよ。

 

三連休の終わりの日の夕方としては、わりといい感じです。オバチャンたちの笑い声もいやな感じがしません。一日の終わりを惜しんでいる気配が満ちている。

 

でも、着実に暑い夏はやってきます。もうどんなにもがいても、確実にやってきて、私たちは身もだえすることでしょう。エアコンの部屋に入ったとしても、そんなのは気休めで、そこを出たらすぐに地獄の熱気に襲われることでしょう。

 

あつい夏首振りしない扇風機そっとながめてふっとため息   AY

 

もうどうしようもない暑さの前に、私たちのすべての道具はパンクしてしまいます。どうしようもない暑さの中で、どうにもならない自分をそこに見つけて、ただ時間が過ぎて疲れて寝てしまうまで、私たちは耐えるしかありません。

 

温暖化の世界へ、私たちはオンボロ扇風機を抱えて立ち向かうしかありません。エアコンでは無理です。ウチワでもいいかな。氷枕はどうだろう。タオル一枚というのもいいかも。蚊取り線香もいるのかな。

 

シンプルな道具で、夏に立ち向かえる体力も持たなくちゃいけませんね。

 

チャボのように?

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昨日、久しぶりに彼女に会いました。仕事が終わって、ひとりでクルマで学校に来たということでした。さっと現れ、さっと帰っていきました。

何がしたくて学校に来てみたのだろう。

三連休を前にして、世の中が少し浮かれた雰囲気だし、少し落ち着こうと思って来

たんでしょうか。

f:id:hakusangogo:20180425234235j:plain ニャンだ? トリか?

 

お仕事が始まって一ヶ月くらいになるのかな。人恋しい気分だったのか。

私たちは、彼女をうまくフォローできたかどうか。それなりに対応したつもりだったけど、一瞬の彼女の来訪にびっくりしたという気持ちの方が大きかったかな。

三年前の彼女の短歌、今でも彼女から聞こえてきそうでしたよ。

 

元気? その一言が言えなくてチャボのようにジャンプするんだ

 

元気そうだったけど、もう少しお仕事のこと、聞かせてもらえたらよかったんだけど、すぐにいなくなっちゃいました。

ネコのいる帰り道

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 彼は弓道部でした。現役時代はめざましい成果はなかったかもしれないけど、団体戦に出たり、チームの柱になれる優しい先輩だったようです。

 その彼はあまり語りはしなかったけれど、それなりに悩み、苦しみ、恋に失敗し、傷つき、また立ち向かいして、将来は家業を継ごうと考えていました。

 結果は、あと十年後か、それとも意外と早くか、家業を継いだたくましい姿を見せてくれる日もあるんでしょう。

 それを私が見られるのかどうか、見ても気づくかどうか、本当に私って、あてにならないのです。

 彼は何によって気持ちを穏やかにできていたのか。そのヒントになるのが次の作品です。

 

帰りみち猫の姿を見たときにぼくの心はなごんでいた   男子

 

 彼の優しさは小さな生き物たちと触れ合うことで生まれていたようです。それを自分でもわかっていたようで、自分の心の不思議をいくつか描いていました。

 家族や小動物、いろんな他者とふれあうことで、彼は癒されていた。 

特別なヒカリ

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彼女は不思議な雰囲気をもった生徒でした。

長い髪、少し冷めた口調、わりとおおがらでゆったりとした感じ。でも、ごくたまにカンシャクを起こしたり、仲間とけんかをしたり、書いてみるとフツーの高校生だな。そうか、そんなに不思議ということでもなかったのか。

でも、彼女が恋愛対象に選んだ相手は、なんと昔っからの幼なじみで、特にスキキライとかなかったと思うんだけど、学校も終わるという時に、ゆるやかに結ばれた感じでしたっけ。これは少し違いますね。たいていの若い人なら、もう少しベッタリいってしまうんだけど、彼女はそういう気配を一切出さなかった。本当につきあっているのか、それさえ疑いたくなるような、淡々とした恋愛みたいでした。

 

そうでした。彼女の作る作品は昔から懐古調でした。あまり今のよろこびを歌い上げる人ではなかった。

 

思い出はいつもキラキラ輝いて幸せになる魔法のようで      女子

 

魔法のように輝く思い出ってあるんだろうか。

私はそんなの持ってないかも、いや、古びただけなのか……。