hakusangogo

生徒の作品を掲載します! どうぞ、よろしく

ネコのいる帰り道

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 彼は弓道部でした。現役時代はめざましい成果はなかったかもしれないけど、団体戦に出たり、チームの柱になれる優しい先輩だったようです。

 その彼はあまり語りはしなかったけれど、それなりに悩み、苦しみ、恋に失敗し、傷つき、また立ち向かいして、将来は家業を継ごうと考えていました。

 結果は、あと十年後か、それとも意外と早くか、家業を継いだたくましい姿を見せてくれる日もあるんでしょう。

 それを私が見られるのかどうか、見ても気づくかどうか、本当に私って、あてにならないのです。

 彼は何によって気持ちを穏やかにできていたのか。そのヒントになるのが次の作品です。

 

帰りみち猫の姿を見たときにぼくの心はなごんでいた   男子

 

 彼の優しさは小さな生き物たちと触れ合うことで生まれていたようです。それを自分でもわかっていたようで、自分の心の不思議をいくつか描いていました。

 家族や小動物、いろんな他者とふれあうことで、彼は癒されていた。 

特別なヒカリ

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彼女は不思議な雰囲気をもった生徒でした。

長い髪、少し冷めた口調、わりとおおがらでゆったりとした感じ。でも、ごくたまにカンシャクを起こしたり、仲間とけんかをしたり、書いてみるとフツーの高校生だな。そうか、そんなに不思議ということでもなかったのか。

でも、彼女が恋愛対象に選んだ相手は、なんと昔っからの幼なじみで、特にスキキライとかなかったと思うんだけど、学校も終わるという時に、ゆるやかに結ばれた感じでしたっけ。これは少し違いますね。たいていの若い人なら、もう少しベッタリいってしまうんだけど、彼女はそういう気配を一切出さなかった。本当につきあっているのか、それさえ疑いたくなるような、淡々とした恋愛みたいでした。

 

そうでした。彼女の作る作品は昔から懐古調でした。あまり今のよろこびを歌い上げる人ではなかった。

 

思い出はいつもキラキラ輝いて幸せになる魔法のようで      女子

 

魔法のように輝く思い出ってあるんだろうか。

私はそんなの持ってないかも、いや、古びただけなのか……。

久しぶりの雨になりました!

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久しぶりにまとまった雨が降っています。先週の土日に雨が降るという話はそれほどでもなかったから、こんなに一生懸命降ってくれたら、少しは空気中のゴミやチリも洗われるかなと思います。

 

近ごろはヒノキの花粉とホコリとPM2.5と黄砂で、クルマが汚れていました。中国からやってくるゴミやホコリ、化学物質をすべてとは言えないけど、少しは落としてもらえたら、少しは過ごしやすくなるのかな……。

 

雨の短歌はなかなかいいのが見つかりません。このギャグ短歌が見つかりました。

私は、何だかなと見ていましたが、これがこの子のギャグだったのか、それとも短歌なんか書いてやらないぞ! という反逆だったのか、私はうまく受け止められなかったなあ。

 

五月雨を集めてはやし最上川そして輝くウルトラソウル    男子

 

芭蕉さんの有名な俳句と、ウルトラソウルの組み合わせです。なあんだつまらないと私は見てしまっていた。本当はそれを持ち上げたり、突っ込んであげたり、ギャグでごまかそうとする彼の心を開いてあげなきゃいけないのに、「もう好きなようにしていなさい」と放置していたから、彼はそこから出られなくなりました。

 

ギャグの殻に閉じこもる人を、そこから救出するには、それをうまくギャクで返して、「おっ、おもしれー」と若い人の硬直した気持ちをほぐしてあげなきゃいけなかったんです。

枝を渡る夏の風よ

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今日、雨が降るということでした。ところがたまたま出かけたところは、昼間は晴れていました。快晴ではなかったけれど、それなりに紫外線はあったようです。

 

帰宅してビックリ! まだヒノキの花粉やら黄砂、PM2.5などが飛んでいて、顔がヒリヒリしました。マスクのあとが白くなっているそうで、マスクをしたまま外に出たら、耳の下あたりに2本の線ができるなんて!

 

春なのか、初夏なのかよくわかりませんでした。イソヒヨドリはずっとキレイな声で鳴いていました。かすかに「テッペンカケタカ」というホトトギスも聞こえた気がします。初夏なのかな。

 

風は、ずっと南風が吹いていました。少し寒い時もありました。まだ春なのかもしれない。次の歌は、もう少し夏が近づいた感じでしょうか。

 

うつくしい夏の景色は山みどり枝踊らせる静かな風よ    女子

 

いつも何かに耐えて、じっと自分の気持ちを抑えていた女の子の作品です。あまり自然に目を向けるなんてしない子かなと思っていたら、こういう作品も作ってたんですね。

 

陸上部でがんばってた時代の作品です。彼女は足は速かったんだろうか。楽しそうにクラブはしていたはずなんだけど、先輩も後輩が入ってくれたと喜んでいたのに、おうちの事情で辞めなければならなくなって、何だか残念でした。

 

今は福祉のお仕事をしっかり真面目にこなしているんでしょう、きっと。

 

湿った教室みんな寝ている……

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 とても衝撃的な短歌です。なんという恐ろしい状況なのだ! これは血の池地獄が針の山かと、ゾーッとします。それくらいドキッとする。

 

 でも、これも青春讃歌なのかもしれないと、暗示をかけて読んだら、まあ、こういうこともありなのかなと納得もしますが、とにかく最初のインパクトは強い。

 わりと静かな短歌ではあるようです。

 

今日もまたいつものように雨が降り湿った教室みんな寝ている   男子

 

 この男の子は、みんな寝ているのをクールに見つめて、自分は特に眠くもないから寝ないけど、何だか梅雨の重い空気が流れているな。このけだるさはどうしようもないなと見ている。

 

 そういうクールな男の子の作品なんでしょう。だれを責めるのではなく、ただけだるい時間があるのだ、でも、それも何かを考えるにはいい時間なのだ、と思っているのかな……。

 

夏が好きだった

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彼は1年からレギュラーで試合に出ていました。夏の大会でも本当によく打ちました。内野だったかな、たぶん。それよりも打撃が印象があります。三番バッターだったでしょうか。将来チームの中心になる人だと思っていました。

 

当時の作品がこれです。

 

夏が来て川でみんなと遊んでるそんな毎日送りたい    男子

 

野球部員としては、そんな遊びはなかなかできないし、野球部以外のメンバーと交流しようとしても、なかなかスケジュールは合わなかったでしょう。

新学期早々、川遊びする自分をイメージしていた。このイメージのギャップはとうとう埋められず、彼は野球部というワクから出てしまいます。

彼女も見つけたけれど、何だかさわやかなカップルだし、彼が女の子を大事に思っているのがしぐさに見えたし、せいぜいつづいて欲しいと思っていたら、お互いのことを思いあっているみたいなのに、二人は別れてしまいます。

 

彼女にも、「どうして?」と訊ねたことがありましたが、イマイチ理由はわからないようでした。

好き同士でも別れてしまう。イメージの共有が難しかったんでしょう。それとも、男の子の方に、自分から線を引いてしまうようなところがあったのかもしれない。

 

彼は恋愛の歌なんか作りません。ただひたすら自分のイメージを追いかけ、それをことばにしていた。

今まで使ったモノたちへ

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本が大好きな彼女は、高校生のビブリオバトルの大会にも出たことがあります。普段は物静かな彼女が、大会ではとつとつとして自分の好きな本のことを語りました。

残念ながら、大会はやはりもっと押し出しの強い子でないと勝てなくて、予選リーグでやられてしまいましたっけ。でも、彼女はそんなのヘッチャラで、別に勝ち進むことなんか考えていないような雰囲気でした。

ただ、大好きな本に関わる大会で、大好きな本のことを語れるだけで楽しかったみたいでした。

私なら、邪心は出るし、大会なら勝ちたいと思うし、負けるのは腹が立つし、負けそうだったら試合に出ないとか、あれこれ考えます。

 

彼女は実に淡々と本の世界を語り、いろんな人とささやかな交流をしている。彼女は夢は持っているみたいで、少しずつそちらに近づいているのかな。えらいなと思います。

 

私はね本が好きなのたくさんの本に囲まれうれしいんだ    女子

 

彼女はどんな本が好きだったのか、うかつなことに私は彼女と本のお話したことあるんだろうか。ないかもしれない。

 

感謝しよう今まで使ったものたちよ、ありがとうね、またよろしく  女子

 

彼女のモノを大事にする気持ちは出ています。でも、少しストレート過ぎるかな。

具体的なモノを1つ取り上げて歌にしてくれたら、もう少し違う世界が広がった気がします。具体性って大事ですね。