hakusangogo

生徒の作品を掲載します! どうぞ、よろしく

チャボのように?

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昨日、久しぶりに彼女に会いました。仕事が終わって、ひとりでクルマで学校に来たということでした。さっと現れ、さっと帰っていきました。

何がしたくて学校に来てみたのだろう。

三連休を前にして、世の中が少し浮かれた雰囲気だし、少し落ち着こうと思って来

たんでしょうか。

f:id:hakusangogo:20180425234235j:plain ニャンだ? トリか?

 

お仕事が始まって一ヶ月くらいになるのかな。人恋しい気分だったのか。

私たちは、彼女をうまくフォローできたかどうか。それなりに対応したつもりだったけど、一瞬の彼女の来訪にびっくりしたという気持ちの方が大きかったかな。

三年前の彼女の短歌、今でも彼女から聞こえてきそうでしたよ。

 

元気? その一言が言えなくてチャボのようにジャンプするんだ

 

元気そうだったけど、もう少しお仕事のこと、聞かせてもらえたらよかったんだけど、すぐにいなくなっちゃいました。

ネコのいる帰り道

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 彼は弓道部でした。現役時代はめざましい成果はなかったかもしれないけど、団体戦に出たり、チームの柱になれる優しい先輩だったようです。

 その彼はあまり語りはしなかったけれど、それなりに悩み、苦しみ、恋に失敗し、傷つき、また立ち向かいして、将来は家業を継ごうと考えていました。

 結果は、あと十年後か、それとも意外と早くか、家業を継いだたくましい姿を見せてくれる日もあるんでしょう。

 それを私が見られるのかどうか、見ても気づくかどうか、本当に私って、あてにならないのです。

 彼は何によって気持ちを穏やかにできていたのか。そのヒントになるのが次の作品です。

 

帰りみち猫の姿を見たときにぼくの心はなごんでいた   男子

 

 彼の優しさは小さな生き物たちと触れ合うことで生まれていたようです。それを自分でもわかっていたようで、自分の心の不思議をいくつか描いていました。

 家族や小動物、いろんな他者とふれあうことで、彼は癒されていた。 

しなやかな自分を見つけて!

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 今振り返ってみても、彼女のしなやかさは感動的でした。こんな痛快な文章が書けるなんて、とても突き抜けている感じがありました。

 でも、これは簡単に獲得したものではなくて、実に地道でコツコツとした歳月の上でやっと身につけた境地だったのだと思います。

 おそらく彼女は、中学校ではその他大勢のあまりできない子に分類され、本人がやる気にならない限り本人の進路は見えてこない。いつか、彼女も目が覚める時が来るだろうけど、とりあえず今は放置しておこうと、置いていかれた1人だったのかもしれない。

 そして、その通りに、彼女は自分の道を見つけた。本当は進学もしてみたい気持ちも持っていたけれど、おうちの人との話し合いで就職をしました。でも、しっかりとやりたいことを見つけて、やがていつかステップアップする日をめざしているようです。

 しばらく彼女の顔を見ていませんね。また、来てくれるかな。どんなに変わったのか、土産話が楽しみな彼女です。

 

★  過去の私を振り返りつつ                                     女子

 過去の自分、思い出すのは、中学校のときのテストの順位。

一つの学年に140人ほどいて、その中で自分は下から数えてすぐのところにいた。これで高校なんて通えるのか、合格できる高校があるのか不安だった。「点数が悪すぎて、いっそ清々しいわ。」と私。

 まわりの「全然勉強していないわ。」の発言。本当か、本当に勉強していないのか。してなくて五○点以上はとってんのか。すげえなあ、天才かよ。

 いや本当にしてなくて、私みたいな点数の人、そりゃあいましたけど、卒業近くなって担任の先生に「お前が一番心配や。」と言われ、私も「私が心配や。」と思いつつ、自分で自分が心配になったけれど、高校には入学できた。よかった。

 それで、勉強。一つの学年に百人ほど。がんばったら、成績は上の方に入れた。数学もイチから始めると、なんとかなるもんでした。もっと先の自分はどうなんだろう。進学するかどうかなんて、小中学校の時の自分には、一秒も考えたことはなかった。私にもこんなことを考える時が来たんだなってしみじみ思う。

 しみじみしている場合じゃなかった。これからの自分、くじけず働けるのか、ストレスに耐えられるのか。分かりませんけど、未来の自分よ、過去を振り返ったら、自分より馬鹿な自分がいるよ。

特別なヒカリ

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彼女は不思議な雰囲気をもった生徒でした。

長い髪、少し冷めた口調、わりとおおがらでゆったりとした感じ。でも、ごくたまにカンシャクを起こしたり、仲間とけんかをしたり、書いてみるとフツーの高校生だな。そうか、そんなに不思議ということでもなかったのか。

でも、彼女が恋愛対象に選んだ相手は、なんと昔っからの幼なじみで、特にスキキライとかなかったと思うんだけど、学校も終わるという時に、ゆるやかに結ばれた感じでしたっけ。これは少し違いますね。たいていの若い人なら、もう少しベッタリいってしまうんだけど、彼女はそういう気配を一切出さなかった。本当につきあっているのか、それさえ疑いたくなるような、淡々とした恋愛みたいでした。

 

そうでした。彼女の作る作品は昔から懐古調でした。あまり今のよろこびを歌い上げる人ではなかった。

 

思い出はいつもキラキラ輝いて幸せになる魔法のようで      女子

 

魔法のように輝く思い出ってあるんだろうか。

私はそんなの持ってないかも、いや、古びただけなのか……。

久しぶりの雨になりました!

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久しぶりにまとまった雨が降っています。先週の土日に雨が降るという話はそれほどでもなかったから、こんなに一生懸命降ってくれたら、少しは空気中のゴミやチリも洗われるかなと思います。

 

近ごろはヒノキの花粉とホコリとPM2.5と黄砂で、クルマが汚れていました。中国からやってくるゴミやホコリ、化学物質をすべてとは言えないけど、少しは落としてもらえたら、少しは過ごしやすくなるのかな……。

 

雨の短歌はなかなかいいのが見つかりません。このギャグ短歌が見つかりました。

私は、何だかなと見ていましたが、これがこの子のギャグだったのか、それとも短歌なんか書いてやらないぞ! という反逆だったのか、私はうまく受け止められなかったなあ。

 

五月雨を集めてはやし最上川そして輝くウルトラソウル    男子

 

芭蕉さんの有名な俳句と、ウルトラソウルの組み合わせです。なあんだつまらないと私は見てしまっていた。本当はそれを持ち上げたり、突っ込んであげたり、ギャグでごまかそうとする彼の心を開いてあげなきゃいけないのに、「もう好きなようにしていなさい」と放置していたから、彼はそこから出られなくなりました。

 

ギャグの殻に閉じこもる人を、そこから救出するには、それをうまくギャクで返して、「おっ、おもしれー」と若い人の硬直した気持ちをほぐしてあげなきゃいけなかったんです。

枝を渡る夏の風よ

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今日、雨が降るということでした。ところがたまたま出かけたところは、昼間は晴れていました。快晴ではなかったけれど、それなりに紫外線はあったようです。

 

帰宅してビックリ! まだヒノキの花粉やら黄砂、PM2.5などが飛んでいて、顔がヒリヒリしました。マスクのあとが白くなっているそうで、マスクをしたまま外に出たら、耳の下あたりに2本の線ができるなんて!

 

春なのか、初夏なのかよくわかりませんでした。イソヒヨドリはずっとキレイな声で鳴いていました。かすかに「テッペンカケタカ」というホトトギスも聞こえた気がします。初夏なのかな。

 

風は、ずっと南風が吹いていました。少し寒い時もありました。まだ春なのかもしれない。次の歌は、もう少し夏が近づいた感じでしょうか。

 

うつくしい夏の景色は山みどり枝踊らせる静かな風よ    女子

 

いつも何かに耐えて、じっと自分の気持ちを抑えていた女の子の作品です。あまり自然に目を向けるなんてしない子かなと思っていたら、こういう作品も作ってたんですね。

 

陸上部でがんばってた時代の作品です。彼女は足は速かったんだろうか。楽しそうにクラブはしていたはずなんだけど、先輩も後輩が入ってくれたと喜んでいたのに、おうちの事情で辞めなければならなくなって、何だか残念でした。

 

今は福祉のお仕事をしっかり真面目にこなしているんでしょう、きっと。

 

湿った教室みんな寝ている……

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 とても衝撃的な短歌です。なんという恐ろしい状況なのだ! これは血の池地獄が針の山かと、ゾーッとします。それくらいドキッとする。

 

 でも、これも青春讃歌なのかもしれないと、暗示をかけて読んだら、まあ、こういうこともありなのかなと納得もしますが、とにかく最初のインパクトは強い。

 わりと静かな短歌ではあるようです。

 

今日もまたいつものように雨が降り湿った教室みんな寝ている   男子

 

 この男の子は、みんな寝ているのをクールに見つめて、自分は特に眠くもないから寝ないけど、何だか梅雨の重い空気が流れているな。このけだるさはどうしようもないなと見ている。

 

 そういうクールな男の子の作品なんでしょう。だれを責めるのではなく、ただけだるい時間があるのだ、でも、それも何かを考えるにはいい時間なのだ、と思っているのかな……。