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長かった二週間、とうとう私たちは甲子園にたどり着きました。うれしいのか、疲れているのか、暑いのか……。とにかく駐車場からの20分くらいは長くて暑かった。なかなかたどりつけないし、日ざしはきついし……。
私は忘れ物をとりにバスまで二往復したから、二倍の暑さでしたっけ。
でも、二回目の道は、あちらこちらを見る余裕があって、それなりに楽しんで歩きました。やはり、暑くても、アドレナリンが出ていると歩けました。
スタンドに入るまでにかなり待たされました。それから狭い通路を通ってやっとスタンドに出ました。私たちの前には同じ緑の報徳学園が競り勝っていた。やっとだだっ広い空間に放り出されてみたら、何だかポカンとしてしまいます。
さあ、アルプススタンドはものすごい緑で、田舎町の素朴な集団がみんな「下克上」を背中にしょって集まりました。
派手な演出も、チアリーダーも、いろんな曲を披露するブラスバンドもありません。でも、地元の人々・二つの中学校など、みんなが連合チームを作り、演奏しています。
素朴にみんなで応援するだけです。とにかく、二週間待たされた後、私たちは甲子園のスタンドにいるのです。
すごいじゃないですか。来ている生徒は二百あまり。あとはすべて応援しようと緑を着て集まったみなさんたちです。こんなにたくさんの方々に支えられているのです。
そりゃ、普段はみなさんそれぞれ忙しいのだけれど、こういう時にはちゃんと集まってくださっている。
わざわざ西宮の甲子園まで、いろんなところから駆けつけてくれた人々がみんなギッシリと座って応援してくれています。
あれ、普通は名前を呼ばなきゃいけないから、名前のボードがあるはずじゃないの?
そうなんです。なんと学校の応援団は、この日バスに積まねばならない名前ボードを忘れたそうです。
なんという不手際! でも、もうそんなの関係ない感じで、みんなが野球部と生徒の声に合わせてくれて、生徒も大人も渾然一体になっています。みんなが一緒に声を合わせられたら、スケールアップしたブラスバンドと一緒になってだんだん一つになっていきました。
二週間前の四日市から、西宮の甲子園の夕方の空まで、とうとう私たちはつながってきました。さあ、ぜひのびのびやってもらいたい!
試合は、初回に3失点して、それからしばらくは落ち着いて、ここでこちらが何点か返していくと、試合がもつれるはずでした。でも、相手に大量得点の機会を与えてしまい、0-8というスコアになりました。
それでも、7回、8回と自分たちの応援の場面になると、大盛り上がりで応援しました。外野のお客さんも大差がついても誰も帰ろうとはしません。
そして、試合は8回ウラに2失点して、0-10になりました。試合はそのままキャプテンが最後の打席で一塁にヘッドスライディングして終わってしまいました。
一気に甲子園1勝までにはたどりつきませんでした。ザンネンでした。
でも、お人好しというのか、だれかを讃えたい気分だったのか、みんなが相手校の校歌の時に手拍子して、「あれ、違うな」と思いつつも、何だかみんなが素朴な集団になっていると思って、これまたうれしい瞬間ではありました。
そして、私たちは深夜、やっと自分たちの家に帰ったのであります。