野球部の子が、1年生の秋に作った短歌があります。
運動会走る少年を見てなぜか落ち着くわたしの心
「こち亀」の両津勘吉さんに似ているという、実直でおっとりしていた彼。
短歌のリズムはわかっていたと思うのですが、なぜか六七三七七です。
穏やかな彼のことだから、彼は天性のキャラでそうなのだと思っていました。
けれども実際は、彼だってあれこれと心をととのえているんだとわかり、わたしたちは、今さらながら驚いたものでした。天性の穏やかキャラなんていないのかもしれません。みんな心をととのえているんでしょう。
自分はもう運動会から遠ざかってしまったという悲しみ・寂しさだと私は解釈していました。でも、別の方は、速く走れない子を見る安心感・優越感だと解釈されていました。いろいろな解釈が成り立つということは、作品が一人歩きできているということです。この作品ももう動き出していました。
ひとり立ちする作品は、作者の元から離れて共感を呼びながら広がります。たくさんの共感者がいたら、みんなに愛される作品になります。
運動会走る少年見ているとなぜか落ち着く私のこころ
少しだけ変更して短歌のコンクールに送ると、見事入選しました。世の中って不思議です。形が整っていると、スンナリ人の心に入っていくのです。
彼は、きっと今も安定してお仕事をしているでしょう。あの安定感、ああいう子がメンバーにいると、チームは落ち着くんだろうな。
今年のチームは、三年生が主体です。人の集まりだから、いろいろな役割があると思いますが、彼みたいなオットリした人いるかなあ。まあ、とにかくがんばってもらおう!
みんなそれなりに安定感あるかな……? そう、祈りたいです。